Bluetoothは、1999年にver.1.0の規格が策定されてから19年目になります。そして、近年ではLE(Low Energy)がリリースされて10年目に入ります。
BluetoothクラシックやBluetoothLE (BLE)デバイスは、競合が多く高性能なものから低消費電力なものまで色々リリースされています。
そんな中、NXPから最新のBluetooth 仕様であるver5.0に対応したQN9080 Bluetooth LEデバイスが昨年リリースされました。
NXPのBluetooth LEデバイスは、どのような機能や特徴を備えているのでしょうか?
今回は、NXPのBLEデバイスであるQN9080を詳しく見て行きたいと思います。
コンテンツ
NXP BLEデバイス QN9080の特徴
- ARM Cortex-M4Fコア搭載(32MHz)
- FSP(Fusion Signal Processor)でアルゴリズム処理を高速化
- 512kB Flash ROM/128kB RAM
- USBインタフェース、キャパシティブタッチインタフェース搭載
- 超低消費電力
- 高速2Mbpsモード
- 小型パッケージ
これら特徴を一つ一つ見て行きたいと思います。
ブロック図

パワフルなコア
ARM Cortex-M4F
QN9080のブロック図です。CPUコアはARM Cortex-M4Fです。BLEデバイスと言えば、低消費電力にするために、Cortex-M0/M0+を搭載していることが多いのですが、QN9080はCortex-M4Fを採用しています。
クロックは32MHzですが、十分な処理能力が期待できます。
FSP(Fusion Signal Processor )
フィルターやアルゴリズムなどのDSP演算では、Cortex-M4FのDSP命令も使用できますが、FSP(Fusion Signal Processor)と言うコプロが搭載されており、特にセンサーなどのアルゴリズム処理を高速に行ってくれます。BLEとしてデータのドカンだけでは無く、きっちりセンサーデータのアルゴリズム処理まで行ってくれると言う設計です。
ROM/RAM
プログラムコードは、512kBの内蔵フラッシュROMに格納できて、潤沢なプログラムコード領域が用意されています。
また、センサーのデータ処理や演算には、潤沢なワークエリア(RAM)が必要ですが、128kBのRAMも贅沢に搭載されており、まさにBLE搭載小型センサー機器には、このデバイスしかあり得ないとさえ思えますね。
だって、このデバイス単体で、BLEのデータ通信からセンサーデータ取得、フィルター、アルゴリズム処理まで行えるのは凄すぎます。
ペリフェラル
ペリフェラルも普通のマイコン並に揃っていて、BLEデバイスでは無く、普通のマイコンとして使用しても、消費電力は低いし、パワフルなコアなので使えますよ。
アナログ入力は、16bitシグマデルタADCと高精度のADCで至れり尽くせりです。
さらには、USB2.0やキャパシティブタッチI/Fまで付いてくると言う贅沢さ。
ただし、ピン数が少ないので、ちょっと微妙ですね。本当に小型機器向けでセンサーを搭載している活動量計などのユースケースには最適ではないでしょうか。
消費電力
このQN9080の消費電力はちょっとヤバイくらいに低消費電力です。
なんと、
受信時(RX)<3.5mA
送信時(TX)<3.5mA (0dBm出力)
です。

しかも、この数字はRXやTX動作時の無線回路の電力に合わせて、MCUコアが動作している電力も込みと言うから恐ろしいです。
よく聞く話では、消費電力を良く見せたいために、無線回路の消費電力だけを謳ったものがしばしば見受けられるのですが、QN9080は違うんですよ。
システムとしてデバイス全体のピーク消費電力がデータシートに記載されています。
別の記事では、MCUXpresso IDEのパワーデバッグの紹介をしていますが、使用したデバイスはQN9080の消費電力を測定していますので、参考にして見てください。
そして、消費電力を測定しているデバイスが、QN9080です。
BT ver. 5.0
QN9080は最新のBluetooth ver. 5.0仕様にいち早く対応した製品です。ver. 5.0では、通信速度が2倍に高速化されたり、通信距離は4倍に増えています。
でも、ver. 5.0だからと言って、全てのBT ver. 5.0対応デバイスがこれら新機能に対応しているとは言えないのです。
バージョン | 特徴 | 説明 | カテゴリ |
ver. 5.0 | エラッタ | コアスペック4.2のエラッタ | 必須 |
CSA5 | コアスペックトランスミッタ 送信出力 <20dBm |
オプション | |
LE 2M PHY | 2Mbps 高速通信モード (通信速度2倍) |
オプション | |
LE coded PHY | ロングレンジ対応(通信距離4倍) シンボルの符号化 |
オプション | |
LE Advertising extension | アドバタイズ拡張 | オプション | |
High Duty Cycle Non-connectable advertising |
アドバタイズインターバルを短縮 | オプション | |
LE Channel Selection Algorithm #2 |
サブイベントによるチャンネル選択 アルゴリズムでアドバタイズサポート |
オプション |
ver. 4.2までの変更点やエラッタを実装していれば、ver. 5.0対応として良いと言うルールなんです。したがって、ver. 5.0からの新機能、拡張を実装されていないのに、ver. 5.0対応のデバイスは多くあります。
高速2Mbpsモード
QN9080では、BT ver.5.0対応で、通信速度が2倍になる2Mbpsモードがきっちりサポートされています。
それ以外は、エラッタのみ対応とのことです。
小型パッケージ
IoTや小型機器への対応を意識しているのでしょう、WLCSPに対応していてパッケージは超小型です。逆にボールピッチが問題で実装できるところが少ないのではないでしょうか。
でも、小型機器を開発している会社には嬉しい仕様ですね。
まとめ
NXPからリリースされたBLEデバイスは、これれからのIoTを見据えた超低消費電力、パワフル、超小型パッケージと言う先進的なBLEデバイスだと言わざるを得ないですね。
BT ver5.0にもいち早く対応し、通信速度も2倍になり、これを超えるデバイスは今のところないと思います。
是非、皆さんもBLEデバイス選びには参考にしてください。